足のつけ根付近の下腹部を鼠径（そけい）部といいます。ヘルニアとは、ある臓器が体の弱い部分やすき間から他の部位へ出てくる状態のことをいいます。そして、左右の足のつけ根付近に発生するヘルニアを総称して「鼠径ヘルニア」といい、俗に「脱腸」と呼ばれています。

鼠径ヘルニアの症状

鼠径部に軟らかい膨らみができ、違和感や時に痛みを伴います。また、押したり、横になると膨らみや違和感がなくなるのが鼠径ヘルニアの特徴です。

鼠径ヘルニア嵌頓（かんとん）状態

腸の一部がヘルニア門にはまり込んで戻らなくなってしまった状態を嵌頓（かんとん）といいます。強い痛みや嘔吐が出現し、放置すると腸が虚血状態となり、腸閉塞を引き起こしたり、腸が壊死する場合もあります。嵌頓と診断された場合は、早めの処置が必要となります。

鼠径ヘルニアの種類

鼠径ヘルニアは一般的に、外鼠径ヘルニア・内鼠径ヘルニア・大腿ヘルニアの3種類があります。

鼠径ヘルニアの治療

発症の原因が物理的・構造的な問題であるため、成人の鼠径ヘルニアは自然治癒が期待できません。鼠径ヘルニアの治療は手術が原則です。

手術の方法

当院では主に腹腔鏡下ヘルニア修復術（TAPP法）を行っています。
腹腔鏡下修復術では傷跡が目立ちにくく、社会復帰も早いとされています。
ただ当院では、患者さんの既往や身体の状態に応じた手術方法を選択するようにしていますので、手術方法の選択に関して、遠慮なく医師にご相談ください。

腹腔鏡下ヘルニア修復術（TAPP法）

腹部に3か所の穴を開け、そのうちの1つの穴から腹腔鏡を入れてお腹の中を映します。その像をモニターで見ながら、別の2つの穴から手術機器を入れます。それを外科医が操作し、腹膜を切開してヘルニアの穴や組織の弱くなった部分にメッシュを当てて補強します。腹膜を縫合し、終了となります。

外来受診から手術、退院後の流れ